※今回の記事とは別の場所で、ドローンを使った点検業務を専門とする株式会社ドローン・フロンティア様が新商品「DJI Zenmuse H30T」を用いて、赤外線カメラで壁面の点検をいたしました。その様子がDJI公式動画となりましてSYSTEM5も制作に協力していますので、是非ご覧ください。
上記の動画とは別に、2024年6月某日、株式会社ドローン・フロンティア様、飯尾電設株式会社(I's DRONE)様に特別に掲載許可をいただき、大阪の都心部にてDJI赤外線カメラ搭載ドローンを用いたビル外壁点検の現場の取材しました。どのように現場で活用しているのかを知る貴重な機会となりました。
目次
今回の点検現場について

今回点検するのは、築35年ほど経過している8階建ての居住用のビル建物。ビル表面は赤外線カメラでの外壁調査が可能な、湿式タイル張りです。また、ビル側面はALCパネルとなっており、そちらは可視光のズームカメラでの調査で劣化具合を見ていきます。
点検業界で普及が進んでいる「DJI Matrice 30T」を使用
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動画解像度 640x512@30fps
※5階建て以上の大型物件浮き・剥離外壁診断、太陽光パネル不具合診断にも使える解像度 -
温度分解能(NETD)≤50 mK@f/1.0
※赤外建物診断に最適な0.1℃以下で、建物診断に適しています。
※長時間の赤外線カメラでの使用でも正確な温度を把握しやすい。 - Large heatsink搭載
- 温度測定範囲 -20℃~150℃(高利得モード)0℃~500℃(低利得モード)
赤外線カメラ点検を始める前に
■壁面温度データロガー
日中のタイルの温度がどれくらい上昇するのかを測るため、タイルと周りの気温の温度が分かる壁面温度データロガーを壁に貼り付けました。ストレージが内蔵されており、温度データが保存されます。
■当日の気温
赤外線カメラの点検を行うにあたり、天気や日照、風のコンディションは非常に重要といえます。
この日の天気は快晴で、最低温度14度・最高温度26度と日較差も8度以上、風は1~2m/秒と緩やか。点検をするには非常に好条件の日でした。
■安全に配慮
万が一に備えて、徹底した通行規制を行いました。コーンや看板、補助者を立てる事は、安全面の観点で非常に重要となります。事前に管轄の警察署にて道路使用許可等も必ず取っています。
飛行して点検開始
大阪の街中でドローンが飛び立ちます。建物が並ぶ中、非常に貴重な写真を撮影できました。


DJIの赤外線搭載産業用ドローンは、赤外線カメラの画面と可視光カメラの画面を左右に並べることができ、赤外線カメラで見つけた異常点(周りとの温度が異常に違う箇所)を、その横に表示されている可視光のカメラの画面でズームして実際にどうなのかを簡単に確認できます。赤外線と可視光のカメラ、一回の撮影でどちらもデータとして残せるで、同タイミングで多くのデータを残せます。横に並べることによって撮影のミスがないか等も飛行中に確認できます。
またDJI Matrice 30Tには「レーザー距離計」が付いており、リアルタイムでドローンから壁の距離が分かります。画角的に映りの良い8m程を維持しながら毎回飛行し、ぱっと見だけではなく正確に距離を把握しながら撮影できていました。
撮影設定は「タイマー撮影」にして、オーバーラップ(写真と写真の重なり)が70%程になるように、縦飛行(上から下、下から上に飛行)によるマニュアル操作を行っていました。舵のスピードを一定にしないといけないので、パイロットの腕が試されます。今回のパイロットの方は経験を積まれているので、舵の切り方が大変安定していました。
■送信機
今回は本体に付帯している送信機1台のみで行いましたが、もう1台「DJI RC Plus(別売)」をご用意いただくと、「A送信機」を操縦用として、「B送信機」をカメラ操作用(モニター用)としても使用可能です。送信機を2台使えば、それぞれで機能や担当を分けることができるので、わざわざ有線モニターを別で用意する手間も省けて、簡単に現場の皆様が状況把握できるようになります。
ドローンを手で持って点検可能


DJI Matrice 30Tの赤外線カメラが「640×512pix」と高解像度のため、ドローン自体を手で持って、タイルのデータを取得する方も多くいます。実はこのクラスの据え置きの赤外線カメラを購入しようとすると、このドローン本体よりも高額なものが多いです。
飛行でも手持ちでも使えるので、コストパフォーマンスが高いです。
手持ちで撮影する方法はキャリブレーションデータの取得にも役立ちます。壁面をテストハンマー(打診棒)で叩いていくと、浮いている所は周囲とは違って「カラカラ」と軽い音が鳴ります。
浮きが確認された箇所の赤外線画像を撮影して温度データを知ることができれば、浮いている所の温度が分かり、上空でデータ取得した時にも、浮いている箇所の把握がしやすくなるそうです。
※法定点検は打診でのデータとドローンのデータをどちらも出さないといけない現場もあります。
「DJI Thermal Analysis Tool 3」でデータの後処理


DJI公式サイトにて無料でダウンロードできる「DJI Thermal Analysis Tool 3.0(Windows PCのみ使用可能)」を使うことによって、R-JPEGデータの分析と解析がPCでも可能です。
温度バーがありますので、表示したい温度の幅にして、色合いを変えられます。写真の横に温度幅が表示されたデータとしてエクスポート可能です。赤外線カメラデータで異常点を見つけたらその場所に丸印をつけて、可視光のワイドで撮影したデータに丸印を付けていきます。(ALCパネルの裏側にシーリング材から水分侵入していることが推測されます)壁が劣化していると思われるデータを集めて、レポートを作成します。
新商品「DJI Zenmuse H30T」を使用して
2024年5月にDJI発表された「DJI Zenmuse H30T」は、「DJI Matrice 350 RTK」というドローンに搭載するカメラです。前モデルのDJI Zenmuse H20Tや、上記で紹介したDJI Matrice 30Tよりも大きな進化しています。
同じく赤外線カメラ点検に長けている株式会社ドローン・フロンティア様にお使いいただきました。
DJI Zenmuse H30Tの赤外線カメラでのスペックは下記のとおりです。
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動画解像度
1280×1024@30fps(DJI Matrice 30Tの約4倍の画素数) -
温度分解能(NETD)
≤50 mK@f/1.0
※赤外建物診断に最適な0.1℃以下で、建物診断に適しています -
Largeheatsink+Fan搭載
※ファンも付いているので、より長時間の赤外線カメラでの使用でも正確な温度を把握しやすいです -
赤外線温度測定の精度
±2°Cまたは±2%(大きいほうの値を使用) -
温度測定範囲
高ゲイン:-20℃~150℃、-20℃~450℃(赤外線NDフィルター使用時)
低ゲイン:0℃~600℃、0℃~1600℃(赤外線NDフィルター使用時)
■DJIの他製品との比較
DJI Zenmuse H30TとDJI Zenmuse H20T、DJI Matrice 30Tのサーマル画像の見え方の比較を行いました。
DJI Zenmuse H20T:高利得モード:-40℃ 〜 150℃
DJI Matrice 30T:高利得モード:-40℃ 〜 150℃
DJI Zenmuse H30Tサーマルカメラでタイルの浮き箇所・漏水箇所を撮影しました。DJI Zenmuse H30Tは従来のサーマルカメラと比較して画素数が約4倍になっており、非常に鮮明に被写体を捉えられました。下記の画像からもわかるようにタイルの形状がくっきりと確認できます。
赤外線解像度の向上により、従来よりも壁面から距離を離して撮影しても、解像度を落とさずに広い面積の壁面を捉えられるため、調査の効率化や赤外線画像解析時に建物の劣化部の診断に非常に有効です。 壁面までの距離が従来と同じケースにおいても、H20Tと比較しFOVが40.6° → 45.2°と広くなっているため、広い面積を捉えることができ、かつ解像度の向上によって正確に判断できるようになると感じました。
また外壁調査では可視カメラでシーリングの劣化やタイルひび割れといった劣化を調査しますが、DJI Zenmuse H30TではDJI Zenmuse H20Tと比較し有効画素数が20MP→40MPと向上しており、34倍の光学ズームができることも相まって、さらに詳細に調査ができるようになりました。
以上の点から建物外壁調査におけるDJI Zenmuse H30Tの性能向上は、調査精度や調査効率に大きく貢献するものだと感じています。
DJI Matrice 30Tでは広角レンズによって壁面の広い範囲を映し出せるため、これがメリットになる現場もあります。現場によってカメラを使い分けていくことが理想です。
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H30Tでは赤外線カメラでクラックも確認ができた。
全体的に解像度向上によりタイルがはっきりと確認できる。
飯尾電設株式会社(I's DRONE) 實方様
Q:ドローンでの業務について見ていただきましたが、いかがでしたか?
A:日が出ている朝~昼内で業務を完了できて、効率よく行っている姿を見て驚きました。今後は需要も高まりドローンでの点検が主になりそうです。
Q:赤外線カメラで撮れたデータを見ていかがでしたか?
A:午前、午後で見え方が少し変わることはありましたが、浮きを見つけるには確率的には高いデータが多く取得できるようになっていたと思いました。
Q:今日撮影したデータはどのように活用できそうですか?
A:建物の最新データを頂き、状況を把握するサンプルにして、建物の12条点検の報告や今後の修繕方法の検討を行い、施工に役立てたいです。
Q:株式会社ドローンフロンティア様に業務を依頼して良かったですか?
A:きっちりと道路使用許可取りや、建物周囲確認等も徹底しているので安心しております。依頼して良かったです。
点検業務を行う株式会社ドローン・フロンティア様について
株式会社ドローン・フロンティア(https://www.drone-frontier.co.jp/)は東京都荒川区に本社を置く、ドローンによる建物点検や空撮サービスを行っている会社です。建築・建設業でのドローンの活用を得意としており、特に赤外線カメラ搭載型ドローンを使用した外壁調査サービスに力を入れています。社内にドローンの操縦士と赤外線解析員が在籍しており、社内で内製化されたドローン点検を行っています。
またマンション・オフィスビルといった物件では赤外線法による調査が適さない物件も多くあることから、ドローン・フロンティアではロープアクセスによる打診調査も対応できる体制を整えており、物件に応じて最適な「無足場フルアクセスパッケージ」となるサービスを提供しています。今回の大阪の案件においても別日にロープアクセスによる打診調査を実施しました。
その他にはドローン・フロンティアが蓄積した現場のノウハウを学べる専門コースをもったドローンスクール「UAS技能教習所」やドローン導入コンサルティング、戸建て屋根の寸法・面積積算アプリ「屋根はかる君」のサービス展開をしております。
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