2024年5月に東北地方でデントコーンを育てている企業様の敷地にて、システムファイブと代理店である秋田スカイテック株式会社様とともに熊の農作物被害対策の検証をしました。
元々お持ちだったDJIのホビー用ドローンを使って、害獣を探索していたお客様。ただ、ホビー用ドローンは探索用に作られておらずズーム倍率が劣っているので、動物を見つけるのに苦労したそうです。
そこで私たちはDJI産業機の赤外線カメラ搭載ドローン「DJI Mavic 3 Thermal」をご紹介し、熊を迅速に探したり、声による威嚇により被害を抑えられないか、お客様と協議・模索しました。
目次
熊を取り巻く環境・特性について

下記は熊を取り巻く環境・特性についてです。
・保護政策により、熊の個体数は年々増加傾向にある。
・食料不足時に人里に下りる習性があり、近年は日中の出没も増加している。
・農作物への被害が深刻化しているが、従業員の安全確保のため、対策が困難な状況にある。
・熊は学習能力が高く、一度侵入に成功した場所には繰り返し訪れる傾向がある。
熊だけでなく、獣害の範囲は今後も拡大していくと予測され、何かしらの対策が求められます。
DJI Mavic 3 Thermalについて

DJI Mavic 3 Thermalの赤外線カメラ・可視光カメラの主なスペックは下記の通りです。
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赤外線カメラ動画解像度
640x512@30fps
※5階建て以上の大型物件浮き・剥離外壁診断、太陽光パネル不具合診断にも使える解像度 -
赤外線カメラ温度測定の精度
±2°Cまたは±2%(大きいほうの値を使用) -
温度測定範囲
-20℃~150℃(高利得モード)0℃~500℃(低利得モード) -
可視光ズームカメラ倍率
光学ズーム7倍・デジタルズーム最大56倍までの可能
赤外線カメラは表面温度を色で映し出してくれる、業務用の特殊なカメラです。据え置きで使う赤外線カメラは高額で、誰でも持てるようなカメラではありませんでした。
そこでDJIは独自で赤外線カメラを開発して、安価で提供できるようになり、現在ではソーラーパネルの点検や、外壁調査・人命救助などで幅広く使われています。多くの動物は地面より高温になっていることが多く、最近では熊以外にも、鹿や鳥獣害対策でも使用されはじめています。
今回システムファイブのスタッフがお客様の現場に伺い、デモ飛行を実施しました。
DJI Mavic 3 Thermalの飛行・送信機での画面

現場は写真のような広大な土地。
視界は広がってはいますが、この中で動物を探し出すのは、特に夜間では難しいかもしれません。

送信機は「DJI RC Pro Enterprise」を使用。Mini HDMI接続でモニターに映し出すことも可能です。
■赤外線カメラでの見え方

▲ズームカメラ(可視光カメラ)での画面

▲赤外線カメラでの画面
実際に飛ばして赤外線カメラで映し出し、赤外線カメラが人を捉えると、どのように見えるか確認していただきました。
赤外線カメラで、ある程度は人の場所が分かります。
それぞれの画像だとわかりづらいので、赤外線カメラと可視光カメラをそれぞれ横にして見比べることも可能です。「リンクズーム」という機能が搭載されており、ズームカメラと赤外線カメラを同画角になるように計算され、見比べることが簡単にできるようになっています。赤外線カメラで高温の場所を見つけたら、可視光のズームカメラで追ってみて、本当にそれが熊なのかを簡単に確認できます。

またホームポイント(離陸場所)よりドローンが65mも離れていますが、赤外線カメラが高解像度なので熱源の確認もできました。DJI Mavic 3 Thermalはコンパクトで飛行音も静かなため、熊にも気づかれにくいのではないでしょうか。
■パレット機能

赤外線カメラでできることは他にもあります。
「パレット機能」では、表面温度を様々な色合いで出すことが可能です。飛行しながら色合いを変えられるので、自分が見やすい色で写真(データ)を残せるので、この機能で熊を非常に見つけやすいと思います。
■指定した範囲の温度計測


モニターを指で囲った範囲の最低温度と最高温度を計測できるので、熊がいればすぐに見つけられそうです。
また、温度アラートを鳴らす機能では、設定温度以上の対象物を見つけるとアラート(ビープ音)を出してくれます。 熊の表面温度がある程度で分かって温度アラートを設定しておけば、広い敷地の中でも熊を探し出すことが可能になります。
■DJI O3 Enterprise伝送

ドローンと送信機をつなぐシステムは「DJI O3 Enterprise伝送」を採用しています。
今回、約1.5km先の敷地まで飛ばしたところ、電波はしっかり届いており、通信が途絶えそうなところはありませんでした。安全なエリアから長距離伝送できますね。1.5km離れても操縦が可能な事は安全であると言えます。木が生い茂っていて人間がいけない場所でも、ドローンなら探索が容易です。
■スピーカー(別売)で警告音を出す


機体上部にスピーカー「DJI Mavic 3 Enterprise Series PART 02-Speaker」(別売)を取り付けられます。熊を警戒させるために音を出して脅威と認識させる方法がありますが、熊はなかなか賢く、同じ音では2週間くらいで慣れてまた戻ってきてしまうため、毎回違う音を聞かせる対策が必要です。送信機に搭載されたマイクで録音した音を何度も流したり、MP3データを入れて音楽や警告音を流したりできます。ホームポイントより約250m離れた場所から最大音量で流したところ、少しですが操縦者側でも音が聞こえました。
操縦アプリ「DJI Pilot 2」について

※上記の画像はMatrice 30T(別機体)での送信機での映像です。

DJI産業機では、操縦アプリ「DJI Pilot 2」を使用します。
自動航行もこのアプリで完結します。定期的に同じ場所を観察したい場合には、自分で毎回操縦するのではなく、プログラムによる飛行も可能です。電源を立ち上げてスタートボタンを押すだけで自動航行を開始します。定期巡回も簡単に行う事が可能です。
■ボタン一つで自動で着陸地点に戻ってくる

送信機のRTH(Return-to-Home)ボタンを押すと、自動で着陸地点に戻ってきます。操縦に自信がない方でも安心の機能となっています。障害物にぶつかりそうな場合は、送信機の一時停止ボタンを押せば、自動航行を一旦やめホバリングさせることも可能です。
またAR RTH機能でRTHのルートをARで表示してくれますので、この戻り方で大丈夫か、視覚的にも判断しやすくなっています。
実験のまとめとお客様の声
DJI Mavic 3 Thermalは、熊の探知および追い払いに有効な手段となる可能性が高いことが分かりました。
- コンパクトな機体設計により、低騒音での監視が可能。
- 様々な色調での温度表示により、熊の識別が容易になる。
- スピーカーによる音声警告は、約250m離れた地点でも聴取可能。
- 自動航行機能や安全機能の充実により、操縦者の熟練度に依存せず運用可能。
今後は、行政との連携や長期的な運用データの収集を通じて、より効果的な獣害対策の確立が期待されます。
お客様の声
『様々な機能が使えて熊を見つけ出すことも容易にできそうだ。人が近くにいくことなくドローン搭載のスピーカーを使って熊を追い払えるので安全に対策できる』
秋田スカイテック株式会社様の声
『一般の空撮用ドローンと同じくらいのサイズながらもIRカメラの精度が非常に高く、50m以上離れた場所からでも対象物の熱を感知することができました。70haを超える圃場を管理されているので、ルートを決めボタン一つで調査ができる自動航行機能が実用的だと感じました。
さらに熊を見つけてからの対処としてはオプションのスピーカーを接続し、誘導することもできるので、拡張性も高く様々な可能性を感じました。
継続的な調査をすることで熊の侵入ルートが分かり、罠の設置コストも最小限に抑えられるメリットも生まれてくるのではないでしょうか。離れた位置から安全に熊を探し出し対処するという点で、お客様のお悩みにコミットできる素晴らしいドローンでした』
後編では、実際に熊を発見し、DJI Mavic 3 Thermalで撮影した様子をまとめています。
赤外線カメラで撮影した映像なども掲載していますので、ぜひご覧ください。
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