2024年10月に滋賀県内でソーラーパネルの敷地を管理している企業様から、弊社代理店「アガタ電子株式会社様」へ、ソーラーパネルで使用している「ケーブルの銅」を夜間に狙う泥棒が増えており、ドローンで何か対策ができないかというご相談をいただきました。
「DJI Dock 2」をアガタ電子株式会社様に卸販売しているシステムファイブとも連携して、ドローンで夜間私有地警備が出来ないかを3社で協議・模索しました。
システムファイブがご提案したのは、産業用自律型ドックソリューション 「DJI Dock 2」と、赤外線カメラを搭載した産業用ドローン「DJI Matrice 3TD」で、不審者を迅速に探したり、ドローンのLEDで威嚇して被害を抑える、という方法です。
※特定飛行に該当する飛行になります。今回は飛行するパイロットが国土交通省から飛行許可を得た上で行っております。
DJI Dock 2・DJI Matrice 3TD等の概要
■DJI Dock 2
堅牢なボディで、過酷な温度環境でも動作する「DJI Dock 2」は、24時間天候に左右されず「Matrice 3Dシリーズ」をサポートするドローンドックです。
ドローンの格納 / 充電 / 離着陸に利用でき、「DJI FlightHub 2」を使用してプログラムされたミッションを実行可能です。
■DJI Matrice 3TD
「Matrice 3TD」は、広角カメラ、望遠カメラ、赤外線カメラを搭載した点検、警備業務に活用が可能なモデルです。「DJI Dock 2」を使用した定期的な点検業務や、これまで人間が行っていた巡回警備業務を離れた場所から行うことができます。
■DJI FlightHub 2
ドローンオペレーションをクラウドベースで管理するオールインワン型プラットフォーム 「DJI FlightHub 2」は、リアルタイムで包括的に状況を把握し、あなたの業務をサポートします。
これにより、ドローンミッション計画、フリート管理や作成データの運用などに必要な全ての情報にアクセスし、業務で得られたデータも安全なクラウド環境に保存でき、利便性と安全性を提供します。
「DJI Dock 2」を遠隔で操作する際に必要なブラウザ型のサービスとなっています。
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上記のような機材を使い、ソーラーパネルの敷地内に「DJI Dock 2」を置いておけば、指定した時間に自動航行を始め、動画を撮影してくれます。その動画はクラウドにアップロードされ、「DJI FlightHub 2」の遠隔PCで動画を確認できます。
今回はそのような運用ができるかを検証しました。
お客様がお困りの件について
ドローンの赤外線カメラを用いての警備について、警備している方がDJI産業機用の操縦アプリである「DJI Pilot2」が使えないといけないであったり、それなりの飛行経験が必要となります。
しかし、そのような人材が毎回夜間に警備する事自体、難しいのが現状です。
据え置き設置型ドローンを使う事で、警備の方は補助者として現地で立ち会いながら、従来の送信機(DJI RC Pro Enterprise)を持って、何かあった時だけ手動操縦できるようにしておくことが出来ます。
DJI産業機に詳しい方がいつでも遠隔で自動操縦を設定、飛行状況を見ながら、操作や介入するような体制にも出来るといいかもしれない、というお考えでした。
実際のソーラーパネルの夜間での現場
狙われる恐れのある電気設備
今回の現場のドローン映像
DJI Matrice 3TD飛行動画/DJI Mavic 3 Classic撮影
ドローン「DJI Mavic 3 Classic」で夕暮れ時に撮影しました。広大なソーラーパネルを置いてある敷地です。「DJI Matrice 3TD」が自動航行で安定飛行している状況が確認できます。
PCで「DJI FlightHub 2」上で自動航行の設定
ウェイポイント作成の様子
飛行中は動画を撮りたいとの事でしたので「ウェイポイント」という点を打っていく方法で自動航行を組んでみました。
「DJI FlightHub 2」で「ウェイポイント」を組む場合、「DJI Pilot2」で組むのとは違って、立体的な地図上で実際にどのような画角になるのかを確認しながら、点を打つことが可能です。
※「DJI Terra」であった詳細点検機能のような形に似ておりました。こちらをご参考ください。
Yaw軸(機体の向き)をロックすることもでき、常時南を向けて動画を撮りたいなど、詳細な設定も可能です。
自動航行を設定したら、その後は作成した自動航行をいつ飛ばすのかを設定する必要があります。
それも「DJI FlightHub 2」で遠隔で行う事が可能です。
「DJI Matrice 3TD」の赤外線カメラで夜間に人が確認できるか検証
「DJI Dock 2」を屋外設置して遠隔で操作する場合、電源とネット通信の出来る環境が必要です。
「DJI Dock 2」はIP55(「DJI Matrice 3TD」はIP54)の保護等級を誇りますので、通常の雨であれば当たっていても問題はありません。
電源ケーブルとネット通信できるようにするデバイスには何かしら防水防塵対策が必要となります。
今回の通信環境は山奥という事もあり、光回線などを取り込むことが出来なかったので、高速かつ低遅延の衛星通信の「Starlink」を使用して通信しました。そうすると携帯回線が届かない山奥でも快適に「DJI Dock 2」を使用することが出来ます。
「DJI FlightHub 2」で上記のように「Actions」を押すと、「DJI Dock 2」周辺の温度や衛星捕捉状況を確認できます。また、他の画面では雨や風の状況も把握でき、毎日飛行するように設定していても、その時の風速や雨量などの飛行状況が、設定した数値よりも悪い場合は「DJI Dock 2」側で判断して飛行を止めてくれるので、安全に運用できるように設計されています。
監視カメラの下部にライトが付いています。夜間でも遠隔で「DJI Dock 2」の周辺状況をカメラで確認することが可能です。
夜間でDJI Dock2を展開した時の動画
夜間で離陸した時の動画
「DJI Dock 2」を離陸した時の動画です。夜間であれば周辺を照らすライトも点灯します。
夜間で着陸した時の動画
「DJI Dock 2」を着陸した時の動画です。RTH機能で自動で離陸場所に戻り、機体が近づくと「DJI Dock 2」が展開します。夜間であれば周辺を照らすライトも点灯します。
広角カメラ(可視光)画像
赤外線カメラ画像
広角カメラ(可視光)動画
赤外線カメラ動画
広角カメラ(可視光)と赤外線カメラでの写真・動画は、同時間で撮影された映像となります。動画では矢印が指されている所に人がおり、赤外線カメラでは人がいる状況も確認できました。(2つの動画を同時に再生すると違いが分かりやすいです)
撮影後は「DJI FlightHub 2」のクラウド上に動画データをアップロードしてくれるので、遠隔で動画データを確認できます。
実際に運用を見たエンド様の声
この度、本実証実験に警備会社として参加いたしました。現在、太陽光発電所での銅線盗難被害が多発しており、警備会社としてはセキュリティ対策が急務であると考えています。
しかし、太陽光発電所は広大な敷地が多く、防犯カメラやセンサーを全面的に配置することは費用対効果の観点から難しいのが現状です。また、街灯が設置されていない場所も多く、侵入者にとっては暗闇に身を潜めやすい環境となっています。
そのような状況の中で、「DJI Dock 2」と「DJI Matrice 3TD」の組み合わせは、これらの課題を解決する手段として大きな可能性を感じました。
実際の警備利用にあたっては、運用やルールの面でまだ解決すべき課題が残っていますが、システム面では非常に優れたものであり、今後、これを活用した警備サービスをお客様に提供できるよう、社内で引き続き検討を進めていきたいと考えています。
ご協力いただきました「株式会社アガタ電子」様のご紹介
アガタ電子株式会社は滋賀県草津市に本社を置くプリント基板の製作、ドローン事業を行っている会社です。
自社で太陽光発電所を運用しており、自分達でパネルの点検などをドローンで行っていたことをきっかけにドローン事業部を立ち上げました。
最近は特に赤外線カメラを搭載したドローンを使い建物の外壁の点検や太陽光パネルの点検に力を入れています。
その他にはドローンの国家資格講習を受けられる登録講習機関を運営。普段外壁点検などを行っている経験豊富なインストラクターが指導しています。
ドローン事業部のYouTubeチャンネルもあり、航空法やドローンの商品紹介などをしています。
ドローンの国家資格にご興味がある方は一度お問い合わせください。